演劇博物館にて十五世観世大夫元章(1722-1774)の企画展示。
新曲、復曲、詞章改訂、作リ物改定、分家樹立(現・銕之丞家)、家元制度確立
とあらゆる改革をしてのけた、ある意味「傑物」な宗家でありますが、
一気に事をすすめ過ぎたのが災して周囲の反発をまねき、没した後は元の木阿弥。
という典型的なパターン。
彼が従来伝わっていた詞章の改訂に取り組んだのは幕閣の後押しあっての事で、
ことに田安宗武を後援につけてよりは、賀茂真淵などの国学者を巻き込み、彼の
天才肌ともあいまって破竹の如き勢いの様子。
また上方の家筋や弟子家をまとめあげ、免状の発行などの現在のピラミッド式体制
を確立した事跡に関して、宗家割印の押された「免状控」も展示されているなど
そのあたり、やり手だなあと。
やり手といえば、自らが家督相続をした際の「寛延勧進能」はそれまでの勧進能が
四日間、という慣例を打ち破っての異例ともいえる十五日開催。
しかもその十五日間で四十三曲を舞うというなにそれどういう神がかりパワーの
持ち主でもあったとやら。
今回の展示は六世中村歌右衛門特別記念室での小規模展示なのが勿体無い。
目録があった分だけまだマシなのかもしれませんが…
ところで、昨年の十月に岩波文庫での『能作書・覚習条条・至花道書』を
購入したのですけど、この本の、特に「覚習条条」には底本(吉田本)による
欠損部分がいくつかあり、全文か、あるいは欠損分だけでも読める本はないかな
と常々思っていたのですが、いやー、早稲田にありましたよ。
『花鏡 謡秘伝抄 演劇資料選書1』(写真下)
しかも、今展示の期間中だけ、定価6300円→1000円という某BックOフもビックリ
の目を疑うような超破格値。
底本が違うので、仮名などは多少の差異があるものの、朱入り影印もあって有難い
限りです。気合をいれて読みこまねば<苦笑

『能作書・覚習条条・至花道書』
岩波文庫 青
世阿弥著
野上豊一郎校訂
『花鏡 謡秘伝抄
演劇資料選書1』
飛鳥書房
早稲田大学演劇博物館編
